赤旗、日倉士歳朗&ロバート・ジョンソン

 新橋にあるライヴ・バーで、通常では絶対にあり得ないようなユニーク極まりないライヴが行われた。


 この日の出演は、日本のブルース系トップ・スライド・ギタリストとして知られる日倉士歳朗。が、何とその隣のカウンター席に腰を下ろしているのは“キング・オブ・ザ・デルタ・ブルース”こと、伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンではないか!すわっ!あのエリック・クラプトンが敬愛して止まない人物が何故新橋にと思いきや、実はコレ、彫刻家の岩野亮介作の等身大人形。彼は上野の東京都美術館で開催される歴史の古い「齣展」に常時出展している天才肌の彫刻家。今回はロバート・ジョンソンの作品を歌っている日倉士歳朗と自らの作品を、ライヴで共演させようという前代未聞の粋な企画。


 ライヴが始まると、日倉士歳朗が傍らのロバートに話しかけたり、一緒に掛け合いでセッションしたりする仕草もあって、通常のライヴでは味わえない楽しさが...。後半に入るとスプーン・パーカスさばきの名人、内藤雄二が参入。日倉士がいつものエリック・クラプトンもロバート・ジョンソン本人でさえ歌えないという口上の後に“歌えるもんなら歌って見ろっ!”という捨て台詞と共に、日本語で「C'mon In My Kitchen」や「Cross Road Blues」などお馴染みのブルースを豪快に弾きまくり、吠えまくれば、会場は大盛り上がり。終了後はロバートの肩に手を掛けてねぎらう日倉士の姿が見受けられ、それがまた心和ませる。それにしてもこの等身大人形、血走った目の造形から髭剃り後のブツブツまで見事な細工に感心するばかり。良い宵、一夜の夢に酔い痴れた。

2月11日@新橋「Aratetsu Underground Lounge」